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「居管絃祭」―旧暦の劇場舞台で上演される管絃祭

宮島の風物

2025.12.20 up

江戸時代の宮島、そこには十数軒の「博多屋」が軒を連ねました。その中の一つが「博多屋」の前身です。明治初期に宮島で、はじめて産業として定着した杓子の問屋を営み、その後、もみじ饅頭の製造を開始し、最大の神事、管絃祭には江波漕伝馬の休み宿を代々務めてきました。

「博多屋」の企業コンセプトは「宮島の、かたち。」。時々刻々、四季折々、歴史と風景が溶け合い一つの庭のように感じられる宮島の魅力。一見無関係に見えるけど、深いところで繋がる風物の数々。普段見慣れている宮島。近過ぎて気づかない初めて訪れた時の感動と、長い間生活して初めて実感するそこに脈々と流れる「何か」を手掛かりに、気づきや問いを深掘りし、発信し、商品に生かしたいと考えております。宮島に来られた際はぜひお立ち寄りください。      博多屋HP → こちら

 

※本記事で使用した写真はすべて嚴島神社より使用許可をいただいたもの。

 

 

管絃祭と居管絃祭。

 

英訳は、Music Festival On Sea とMusic Festival On Stage。

 

海上の移動舞台と固定舞台、同じ曲目を異なる視点で2度楽しむ-。

 

38年ぶりに訪れた、旧暦6月が閏(うるう)月になる年。

 

旧暦上では6月が二度あるため、その二度目の6月17日にあたる2025年8月10日、嚴島神社で「居管絃祭(いかんげんさい)」が粛々と執り行われました。

 

大粒の雨が降る中、午後6時ごろから本社で祭典が始まり、雨天の暗い空が一瞬明るくなった夕暮れ時、神職たちが高舞台に設けられた船型の屋形で優美な管絃を奉奏。

 

灯された提灯が揺らぎ、まるで平安時代にいるような神秘的で幻想的な光景が広がっていました。

 

 

 

 

【嚴島神社社殿で行われる「居管絃祭」とは】

 

1836年に刊行され、四季折々の風景や人々の生活、嚴島神社にまつわる宝物など紹介し、安芸国厳島(現在の廿日市市)の歴史資料として貴重な「芸州厳島図会」。

 

その資料には居管絃祭について、

 

「六月閏あれば後の十七夜神前にて管絃あり、俗にこれを居管絃祭といふ」

 

とあるそうです。

 

平清盛公が、嚴島神社の神様を慰め奉る祭事としてはじめたとされる管絃祭は、海上で執り行う舟管絃。

 

現在は御座船に、神様の乗り物である御鳳輦(ごほうれん)を乗せ、神職が管絃を奏でながら対岸の地御前神社、島内の長浜神社、大元神社などを参拝します。

 

それに対し、居管絃祭は海上に出ず、高舞台を船と見立て、社殿内で奏でるため「居ながら管絃」という意味で使われています。

 

(船形の屋形の中で12人の神職が管絃を奏でました)

 

 

奏でる曲目は、管絃祭も居管絃祭も同じです。

 

《曲目》

1.平調音取(ひょうじょうねとり)

2.萬歳楽(まんざいらく)

3.三台塩急(さんだいえんきゅう)

4.五常楽急(ごじょうらくきゅう)

5.陪臚(ばいろ)

6.鶏徳(けいとく)

7.越天楽(えてんらく)

8.老君子(ろうくんし)

9.早甘州(はやかんしゅう)

10.抜頭(ばとう)

11.林歌(りんが)

12.催馬楽(伊勢の海)(さいばら)

13.合歓塩(がっかえん)

 

 

海上に出る管絃祭とは異なり、参拝者がその音色をしっかり聴くことができるのも貴重な体験。

 

奏者の管絃を奏でる指使い、表情などを目の前で拝見でき、管絃祭の臨場感に酔いしれます。

 

 

 

(海上に出る管絃祭では、見ることのできない演奏中の様子を拝見できる居管絃祭)

 

【なぜ38年ぶり?】

 

2025年に斎行された居管絃祭は、1987年以来38年ぶりでした。

 

その前は1979年、さらにその前は1960年で、斎行される間隔は一定ではありません。

 

なぜなら、旧暦には季節のずれを調整するための閏月が2~3年に一度あり、閏月が6月にあたる年のみ居管絃祭が執り行われるからです。

 

毎年行われる、海上に出て対岸へ渡る管絃祭は旧暦6月17日が神事の日。

 

閏月が6月の年は「6月17日」が2回訪れ、その二度目の6月17日が居管絃祭の日になります。

 

 

 

【居管絃祭の屋形と管絃祭の御座船。その違いは?】

 

(高舞台に設けられた御座船に見立てた屋形。雨の中、平舞台が極薄の水盤となり、船影が映り込みます。2025年8月10日)

 

 

居管絃祭は、嚴島神社本殿前の高舞台に、特徴的な三基の舳(みよし)型を取り付けて御座船に見立てた屋形を設置します。

 

(御座船と同じ三基の舳型)

 

 

見立てたと言っても、管絃祭の御座船と居管絃祭の屋形は違いがあります。

 

その一つが、屋形に飾られる各月の造花。

 

2025年居管絃祭の際に嚴島神社に配布された説明資料には、

 

「正月-松 二月-梅 三月-桜 四月-山吹 五月-花菖蒲 六月-若竹 七月-萩 八月-朝顔 九月-桔梗 十月-菊 十一月-紅葉 十二月-水仙」

 

と紹介されていて、造花は屋形の左右に並べられ神事を彩ります。

 

しかし、海上に出る管絃祭の御座船に花は飾られません。

 

(屋形に並べられた12ヶ月の花。当日は雨だったので、それぞれビニールで覆われていました)

 

 

また、芸州厳島図会には、江戸時代の御座船に僧侶が乗っている様子が描かれています。

 

(芸州厳島図会。江戸時代の御座船には花が飾られ、お寺の僧侶が乗っています)

 

 

こちらも、現在の御座船に僧侶は乗りません。

 

(2023年8月3日の管絃祭の様子。芸州厳島図会と2023年の御座船を見比べると、さまざまな飾りが変わったことが分かります)

 

 

神事に花を飾ったり僧侶が登場したりするのは、明治時代初期まで続いた神仏習合の影響。

 

現代の居管絃祭の屋形に飾られる花は、その面影を残しています。

 

(神様の乗り物の御鳳輦)

 

 

御鳳輦は、管絃祭では御座船に移御しますが、居管絃祭では高舞台前に置かれます。

 

そこには御鳳輦とともに、弓矢、楯、鉾、さしは、錦蓋、旗の「管絃祭威儀物」も飾られていました。

 

(御鳳輦の屋根の上には鳳凰の飾りがあります)

 

(御鳳輦のそばには、管絃祭威儀物が左右に並べられていました)

 

 

 

【次の居管絃祭は11年後】

 

(居管絃祭が執り行われた2025年8月10日は雨でした)

 

 

38年ぶりということで話題になった居管絃祭。

 

 

不定期でありながらも時代を超え、伝承されていく居管絃祭は唯一無二の素晴らしい神事。

 

次の閏6月は、11年後の2036年です。

 

(38年ぶりということもあり、たくさんの人が参拝していました)

 

 


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宮島の最新イベント情報について

宮島観光協会HP Http://www.miyajima.or.jp/event/calendar10.php

 

嚴島神社の行事予定について

嚴島神社公式HP Http://www.itsukushimajinja.jp/jp-sp/

 

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